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【インタビュー vol.1】クリエイティブ・ディレクター 常ひとみ
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服を着る喜びを、改めて。追求したのは、“心地よさ”というエレガンス

生活環境の大きな変化の渦中での制作となった2021年春夏コレクション。
ブランドとしても「クリエイションを見直すきっかけとなった」とクリエイティブ・ディレクターの常は語ります。
高揚感をもたらす服とは? 真の意味でのラグジュアリーとは?
根本に立ち返り、見えてきたのは、自分も周りもリラックスさせ、そして輝きを与えるアイテムたち。
今シーズンのテーマとともに、コレクションについて解説します。

まずは自分の気分が上がる服を。
目で見て、袖を通して、感じていただきたい

目で見て、袖を通して、感じていただきたい

――今春夏コレクションは、このような状況下での制作となったわけですが、コレクション制作はどのように進められたのでしょうか?

今回の春夏は、いろいろな制約もあったのですが、テーマやモノ作りについて改めて、深く考えるきっかけにもなりました。エポカは、女性が女性であることに自信を持てる服、それを表現するブランドです。ハレの日を美しくサポートすることはもちろん、ご自宅や部屋で過ごす時間も気分を上げていただければと思い、ラグジュアリーとは何か、そこを掘り下げることからスタートしました。

――テーマには、古代ギリシアのヘレニズム期を代表する哲学者エピクロスの言葉である”アタラクシア”が挙げられています。

“アタラクシア/ATARAXIA”とは、激しい情熱や欲望から解き放たれた、落ち着いた心の状態=平静な心を指す言葉です。人は居心地のいい空間に身を置くことで平穏な心が保たれ、また、美しい自然や芸術に触れたとき、心がときめき、高揚感がもたらされる。そのような考えを、服で表現できればと。具体的には、華やかな色使いやフェミニンでいながらスタイリッシュであること、女性らしさを楽しめるようなデザインになっています。加えて、快適な日常をサポートする生地選びも外せないポイントのひとつです。

CANEPA/カネパ ワンピース

――よく服から得る高揚感を「袖を通した時に気分が上がる」などと表現することがありますが、それは今回、どのような部分になるのでしょうか。

まずは色使いです。今日身に着けているワンピースは新作の中でもキーとなるアイテムで、イタリアの生地を使用しています。「CANEPA/カネパ」というイタリア・コモに拠点を置くテキスタイルメーカーで、ラグジュアリーブランドにも多くの顧客を持っているところです。

――コモはテキスタイルメーカーが多くあるところですね。

水がきれいなところなので、イタリアではテキスタイルの名産地となっています。これは「CANEPA/カネパ」のコレクションからインスピレーションを受けて、柄を大きくしたり、パターンを調節したりして、オリジナルで作った生地です。

――コレクションのひとつのイメージが、まさにこのワンピースのカラーパレットで表現されていますね。

そうですね。それをひとつのテーマにしていて、トランスペアレントの生地だったり、トーンオントーンの組み合わせだったりと、広げていきました。また、ピンクやライトグリーン一辺倒だと甘くなりすぎてしまうので、ミリタリーやワークの要素も取り入れています。それぞれの着こなしはもちろん、それらをクロスコーディネートすることで、着こなしの幅も広がり、自由に楽しんでいただければと思っています。

――マネキンが着用しているジャケットはミリタリー的な強さとレディなエレガンスが同居した一着だと思います。

これはイタリアの名門生地メーカー「LIMONTA/リモンタ」のものを用いています。麻混なのですが、ハリコシがあるしっかりとした素材でジャケットとパンツを作りました。セットアップで着ていただくのもいいですし、また前述のフラワーモチーフを刺繍したスカートと合わせていただくのもいいと思います。華やかな色柄とフェミニンな素材は、身につける人はもちろん、見た目にも好印象を与えてくれると思います。

機能性と女性らしさを両立した新ラインが登場

ラ・マリア・リュテックス

――今季からは、機能性にこだわった新しいコレクションラインもスタートします。

これは今の状況があったからこそ生まれてきたようなコレクションです。ラグジュアリーを意味する“リュクス”とテクニックを意味する“テック”を組み合わせ、「ラ・マリア・リュテックス」と名づけました。ワンマイルファッションというか、“ちょっとそこまで”だったり、少人数でのホームパーティなど、肩肘張らない場で快適に過ごせるアイテムが揃っています。機能性を持たせるということと、しっかりとした女性らしさは両立できると思っていて、例えば海外では当たり前になってきている“洗える”という要素も考慮しています。「一回着たらすぐにクリーニング」という時代でもないですし。

――それこそドライクリーニングでは石油由来の洗剤を使用しますから、そういった点でも時代に即していますね。

エポカ全体に言えることなのですが、サステナブルな素材を使うという点も、前向きに捉えています。それがクリエティブの妨げになるということは決してありません。風合いを取るか、環境に配慮した素材を取るか。二者択一であれば、エポカは後者を取ります。どんな素材であれ、特性を生かして女性らしさを引き出すことは十分に可能です。そこに、ダーツの入れ方やウエスト位置の切り替えを少し高めに設定したり、ウエストマークできるベルトや、ネックレスなどのアクセサリーが加われば、なおエポカが求める女性像を表現できると思っています。

――長く着る、というのもサステナブルな要素のひとつです。

エポカのアイテムは、ワンシーズンで着れなくなってしまうものでは当然ないですし、そう考えると素材も大事です。デザインもシーズントレンドに過剰に流されたものになってしまうと、来年はちょっと着づらくなってしまったりするので。長く着てもらうという意味でも、デザインと素材とサステナブル、3つのバランスの取り方は重要な部分です。

――今春夏はいろんな意味で、心地よさを感じられるコレクションになっているようです。

今年は、“おしゃれは我慢”という考えから離れてみるいい機会です。今シーズンはこれまでで最も、着心地という部分にこだわったコレクションになりました。例えば、スカートのウエスト部分にしても、イージーな仕様にしていますが、いかにもゴムみたいな仕上げではありません。ウエストにも生地そのもののテンションを生かした仕様を施し、見た目はすっきりと美しく仕上げています。それはステッチの糸選びまで及んでいて、通常の糸ではなく伸縮性のある糸で縫っています。“心地よさ”というものをお洋服を着た時にも体感してもらいたいんです。コレクション全体だけではなく、アイテムの細かい部分からも感じていただければうれしいです。

  • Text:Ryuta Morishita
  • Photo:Hideyuki Seta
  • Direction:Fumiya Ide(RUBYGROUPe)

常ひとみ
エポカ クリエイティブディレクター。
2002年に〈エポカ〉のニットデザイナーとして参画し、2009年にチーフデザイナーに就任。
2018年よりエポカのクリエイティブディレクターに就任し現職に。

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